My lovely person

08


「越前南次郎の娘である君を俺達は狙ってた。でも、君はある村に預けられてて村人達が君を守ってたせいで俺達は手を出せなかっ
た。そこで馬鹿な海賊を騙して、あの村を襲わせた。」
「じゃあ、あの海賊達は君等の仲間なのか?」
「違うよ、大石君。俺達はあいつらを挑発しただけ。『君等はあんな小さな村1つ潰せないのか。』ってね。そしたらあの海賊共プツンてき
ちゃったらしく、鼻息荒くしちゃってさー。でも、いいこと教えてあげるって教えたらいきなり目を輝かせだしたよ。」
「いいことってなんや?」
忍足の質問に千石は笑って言った。
「『あの村には村人達が守ってる者がいる。そいつはものすごく美しいそうだ。』って言ったんだよ。それ言ったとたんあいつら何も考え
ずにあの村へ向かった。俺達はあいつらがあの村を潰してリョーマ君を連れてくるのを待った。連れて来たらあいつらを殺してリョーマ
君を奪う予定だったんだ。でも手塚君達が来て、リョーマ君を連れてったから俺等の計画は丸つぶれさ。」
「そ、そんな・・・・・・・・。」
全員がはっとして声を出した方を見るとそこには千石に腕をつかまれたまま震えているリョーマがいた。
「リョーマ、声が・・・。」
「おちび・・・。」
不二と菊丸が思わずといった風に声をだすが、リョーマにその声は届いてなかった。
「お、俺のせいで村の人たちが殺されたなんて・・・。俺のせいで奈々子さんは・・・・。」
震えた悲痛な声でそこまで言うとリョーマは気を失ってしまった。
「「「「「「リョーマ!!!」」」」」」
「おっと。」
リョーマの一番近くにいた千石が倒れたリョーマの体を支えた。
「千石、リョーマを返せ。」
「嫌だよ。さっきの俺の話聞いてた?俺達はリョーマ君が欲しいんだよ。」
「だからと言ってはいそうですかとわたせないんだよ。」
「おちびを返せ!」
「これ以上リョーマを苦しませないでくれ。」
手塚、不二、菊丸、大石の順に千石に言うが千石は聞く耳をもたなかった。
「跡部、俺等もあいつ等と戦わせてくれ。」
「そうだぜ!このまま見過ごすにかよ!」
「あとべぇー。」
「うっせぇ。わかってる。手塚が行けと言ったらお前等もいけ。」
「さっすが、跡部さん。」
「お前等を止めたってどうせ行くんだろうからな。」
「わかってるじゃねぇか。」
忍足、向日、芥川の順に跡部に言うと跡部は仕方がないといった風に言った。そこに鳳と宍戸まで加わって跡部は呆れたような顔をし
ていた。





「どうしてもリョーマを渡さないというのなら、こちらにも考えがある。」
「どうする気?こっちにはリョーマ君がいるんだよ。」
「こっちにはこれだけの人数がいるんだ。これだけを君達が相手にできるかな?」
「それに手塚と跡部が揃ってるんだにゃ。お前等に勝てるかにゃ?」
「うっ・・・。でも君達こそ忘れてないかい?俺達は山賊。陸には陸の戦い方っていうものがあるんだよ。」
「そんなのどうってことないね。」
「そうそう。俺等を甘くみるなよ。」
「ちょーっと、待ったぁ!!!!」
そして両方が戦いの体制に入ったとき、仲裁の声が聞こえた。
「「「「「「!!!!!」」」」」
全員がその声にびっくりしている間にリョーマは千石の腕の中から消え、声を上げた男に抱かれていた。
「何?!誰だ!!」
思わず千石が声を上げた。
「なんだぁ、お前等。こいつの取り合いかぁ。やめとけ、やめとけ。そんなことで命縮めんな。」
「もう、あなた。そんなこと言って1番心配してたのはあなたでしょう?」
「あなたがたは?」
妻と思わしき女性が男に言ったのを聞いて手塚が話しかけた。
「おう青少年!お前さんがこいつを助けてくれたのか?感謝するぜ。」
「本当にありがとう。私達はこの子を守ってあげることができなかったから本当に感謝しています。」
「じゃあ、あなた達はリョーマの・・・。」
「俺は越前南次郎だ!」
「妻の倫子です。私達はリョーマの父親と母親です。」
不二の言葉を受けて2人が自己紹介した。
「さて、お前さん達はリョーマを狙ってたそうだが、なぜだ?」
「俺達はリョーマ君を人質にあなたに会おうとした。」
「目的は?」
「あなたが手に入れたという財宝だ。」
「ああ、あれか。あれは世界中の貧しい奴等にばらまいてきた。」
「なっ!!」
「さ、これで用事はなくなっただろ。俺が温厚なうちにさっさと引き上げな。」
「・・・・・・仕方ない。帰るぞ。」
南次郎に言われて南が全員に帰るよう言い、歩き出したが、千石は途中で振り向き、南次郎に向かって言った。
「南次郎さん。リョーマ君が起きたら『色々とごめんね。』と伝えてもらえますか?」
「ああ。わかった伝えとく。」
南次郎が返事をすると千石はまた歩き出し、消えて行った。
「さて、詳しいことはこいつを寝かせてからにするか。おい、そこの泣き黒子のある兄ちゃん。お前さんがここの持ち主だろ?案内頼む
ぜ。」
「あなた!ごめんなさいね。あなたお名前は?」
「・・・・・跡部景吾だ。」
「跡部君。この子を休ましてあげたいの。それから説明するわ。案内頼めるかしら。」
「わかりました。」
南次郎の雑な言葉に一瞬跡部は嫌な顔をしたが倫子の言葉に頷き跡部邸へと引き返した。